「強いドイツ」復権へ加速、リトアニアで第2次大戦後初「独連邦軍の単独国外常駐」…ウクライナ支援も強化

2025年5月30日(金)7時0分 読売新聞

28日、ベルリンで、ウクライナのゼレンスキー大統領(左)を迎えるメルツ独首相=AP

 【ベルリン=工藤彩香】ロシアのウクライナ侵略に絡んで抑止力強化を急ぐ欧州で、ドイツのメルツ首相が「強いドイツ」の復権に向けた動きを加速させている。第2次大戦を引き起こした経緯からドイツの軍備拡張は北大西洋条約機構(NATO)内でタブー視されてきたが、欧州軽視の姿勢を強めるトランプ米大統領の再登板も受け、メルツ政権の積極的な貢献に欧州内の期待が集まっている。

 「我々はウクライナの永続的な平和、そして欧州全体の安全を望む。欧州、米国の友人と可能な限り緊密に連携し、その全てを実現させたいと考えている」

 メルツ氏は28日、ベルリンでウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談後の共同記者会見で、ウクライナ支援の継続と拡大を約束した。長らく途絶えていた両国の政府間協議の再開と、ウクライナによる長射程兵器生産への財政支援も打ち出した。

 メルツ氏はこれに先立つ26日、米欧がウクライナに供与する長射程兵器に射程制限はないと明言。メルツ氏はかねて、ショルツ前首相がロシアを警戒して拒み続けてきた長射程巡航ミサイル「タウルス」(射程約500キロ・メートル)の供与に前向きな姿勢を示しており、国内では28日の会談で供与が実現するとの臆測が高まっていたが、この日は供与に関する発言はなかった。

 トランプ氏の仲介によるウクライナとロシアの停戦協議の行方が不透明な中、欧州の政治・経済をリードするドイツがウクライナ支援を強化し、英仏などと結束して米露への働きかけを強める重要性は増している。

 メルツ氏も、欧州の防衛力強化に貢献し、ドイツの存在感を高める構えだ。22日には、バルト3国のリトアニアで、第2次大戦後初となる独連邦軍単独での国外常駐が始まった。

 リトアニアは、飛び地を含むロシアと、その同盟国ベラルーシと国境を接するNATOの東方防衛の要だ。首都ビリニュスで同日開かれた旅団発足式でメルツ氏は「リトアニアの安全はドイツの安全だ。行動で責任を果たす」と強調。リトアニアのギタナス・ナウセーダ大統領も「歴史的な日だ」と歓迎した。

 ドイツは3月にはウクライナ支援や軍備拡張を可能にする国防費増額に向け、財政規律を緩和する基本法(憲法)を改正した。トランプ政権がNATO加盟国に求める国内総生産(GDP)比5%の防衛費目標についても、メルツ氏は支持する考えを表明している。

 発足間もないメルツ政権について、独公共放送ARDは28日、「ドイツを英仏などと共に欧州の心臓として機能させることには成功した」と評価した。欧州の盟主として指導力を示したメルケル元政権以来、存在感が低下したドイツが再び欧州で主導的役割を果たせるのか、メルツ氏の手腕が試される局面が続きそうだ。

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